第十一話『ボクの町が消えた!』

 

 ”目を疑う”
~見間違いではないかと疑うほど、そのモノゴトが信じられないさまを意味する~

毎日生活をしていて、驚きって起こってほしいとは願えどそうそうあるものではない。そんな”目を疑う”衝撃的な出来事が起こってしまったのだ。信じられない事実を目の当たりにして、ボクが起こした行動とは?

それではどうぞ。


「生まれも育ちも、足立区六町。」

わたくし、生まれも育ちも足立区六町(ろくちょう)。
東京のはずれで、一番近い駅でも自転車で25分はかかるぐらい不便な町。幼少のころは、田んぼや畑があちこちあって昆虫取りやザリガニ釣りをして遊んだものだ。公園ではないただの広場なんかもあったりして、野球やサッカーを日が暮れるまで夢中にやっていた。

そうそう学校の帰り道で思い出した。ある日学校でリンゴをもらい「ハンカチで磨くとピカピカになるよ」と誰かが言っていた。帰宅の道すがらずっと磨くのにハマり、リンゴはもはやプラスチックのような輝きに。家に着いたらランドセルを忘れたことに気づき、学校へ逆戻り。ウチは学区内の一番端、所要時間は往復40分。

もうひとつ。帰り道に広い廃材置き場があり、その一角に木製のかっこいい机が捨てられていた。ボクは毎日そこへ行き、一番大事なオモチャを引き出しに入れてひとり遊び。自分しか知らない秘密基地。結果は想像どおり、いつの間にか机ごとどこかに消えていた。あのゴールドライタンの超合金 はいまいづこ?

途中数年抜けた時期もあるが、生まれてから25年ぐらい過ごした町。


「キッカケは渋滞。」

仕事か何かで遠出をした帰り、高速道路の渋滞にハマった。
カーナビでは、帰宅までの予想2時間以上と出ている。朝早かったこともあって眠くてたまらない。 偶然次のインターチェンジがかつて住んでいた場所だったので、休憩がてら立ち寄ることに。引っ越しをしてから、すぐに都市開発が行われたとは聞いていた。20年以上ぶりに地元に足を踏み入れる。


不思議の国のアリス状態。」

地元を自転車でなく車で移動できるなんて、ラクすぎて笑えてくる。
かつての小学生目線とは違い、すべてが小さく見えるのが不思議。元住んでいた家へ呑気に向かうが、、、なにかがおかしい。辿り着くと、そこは立体自転車駐車場になっていた。遊んでいた公園はそのままだから間違いはないようだ。

まず驚いたのが、住んでいた場所の目の前がロータリーになっていて、地下鉄の駅ができていたこと。大きなスーパーはあるし飲食店なんかもあちこちにできていて、完全住宅街だった閑静な場所がいまや人が賑わう町に変貌を遂げていた。家があったところをガンガンぶち抜き見たことない新しい道路もできているなんて、想像もしていなかった。ココロもカラダも迷子になる。軽く動揺。。。

片っ端に覚えている場所目掛けて車を走らせる。
仲の良かった友だちはまだ住んでいるのか。好きだったあの子の家はまだあるのか。駄菓子屋、プラモ屋、ファンシーショップ。通っていたスイミングスクール、小学校すらすべてが消えてなくなっていた。目の前に映るのは、東京ドームぐらいはゆうにある広大な更地。爆弾が落ちたのかと錯覚するぐらい何もない。きっとこれから大きなマンションや商業施設などができるのだろう。東京に住んでいても、ここまでの変わり様はなかなかお目にかかれない。当時、東京の地価相場の上がり率NO.1と紹介されたニュースを覚えている。

アタマの中には、いまでもはっきり生まれ育った町がある。だけど、もはやこの場所で育った実感はなくボク自身が半信半疑。整理がつかないままプラプラしてたら、昔ながらの銭湯を見つけた。行ったことはない。郷愁に浸り切れなかったのか、代わりに熱々のお湯に浸かり、なぜかヒト風呂浴びてから家路につく1日になった。


「まとめ。」

人生振り返っても、なかなかのインパクトがあった。
変わらず残っているところと、まったく知らない建物で埋め尽くされているかつての故郷。それに加えて、自分の居場所や思い出をすり合わせることができない戸惑いが、一度に訪れた困惑する自分。

風呂まで入ってしまう意味不明な行動も、いま思えばそれすらも思い出作りの足しになった。

こうやって文章に残しておけるということだけでも良しとしておこう。

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