第五話 『黄昏、すーさん!』


コロナ自粛が始まって、そろそろ1年半ぐらいだろうか。
当初は、『コロナになった!』なんてことになったら、犯罪者扱い。報道なんかでも、過剰に悪者扱いして、バイオハザードの世界に飛び込んでしまったかのようだった。

今では、『with コロナ』なんていう言葉も生まれ、どう付き合って生活していくか。すべては経済につながっているからこそ、背に腹はかえられないこの世の中で、生かされている我々の宿命か。治療薬ができるまでは、こんな感じで日々が流れていくのだろう。


「見直すきっかけ!」

失礼!こんなわかりきった重い話をしたいのではなかった。。。
コロナ渦で、家ごもり需要がもてはやされている昨今。思わぬところに、この需要が飛び火している。

先日、水槽の水草を買いにアクアショップに行ったら、かつてない数の人でお店が賑わっていた。聞くところによると、まさに家ごもりが続いているから、こういった趣味の人が増えているそうだ。

確かにそうで、出かけたり、呑み歩いたりがすべてではなくて、家でできることを見直すイイきっかけになっているという側面もある。ボクもそうだが、忙しさにかまけて家ゴトをなにもしていない人も多いのではなかろうか。


「すーさん」

GOBサイトのアートディレクションをしてくれているトイちゃんは、無類の昆虫好き。
レベルの低いボクらに合わせて、いままで知らなかった昆虫の生態や、オモシロ話を魅力的に聞かせてくれる。話の流れから、クワガタを1匹譲ってもらうことに。

トイちゃんが繁殖させて生まれた、その名も『スラウェシオオヒラタクワガタ』。気性は激しく、力持ち。凶暴な性格もあって、クワガタ同士が戦う闘犬のような存在らしい。「挟まれたら軽く、血、出ますよ~」と、笑いながら教えてくれた顔を忘れない。

そんなこんなで緊張気味に、我が家にクワガタを出迎えた。中野にある、日本を代表する昆虫専門店<虫社>にいって、大きな家、オガクズ、樹皮、餌のゼリーを揃え、クワガタの環境を整える。名前も付けなければと、『スラウェシオオヒラタ』の頭文字から、息子が名付けた「すーちゃん」を採用。

なぜかボクだけ「すーさん」と、さん付けで呼んでいる。


「ハマってしまった!」

すーさんは、おもしろい。
1日中動き回ったかと思ったら、まったく出てこない日もある。餌のゼリーにアタマを突っ込んだまま寝てしまっていることもある。時には、樹皮をフトンみたいにかけて寝てる姿を見ると、もう愛おしくてたまらない。凶暴だって言ってたから、好きになれるか心配していたけど、そんなのは一瞬で吹き飛んだ。

ボクは夜中に帰宅することが多い。玄関には、灯がひとつ。そっと玄関をあけて靴を脱ぐと、すぐ横にすーさんがいる。いつも元気で凶暴(?)なすーさんが、薄暗いライトをバックに、しおらしく黄昏ているのである。

なんてことだ!
正直、昆虫が苦手なボクが、完全にハマっているではないか。
いや、昆虫が好きになったわけではない。すーさんを好きになっただけなのだ。まだトイちゃんほど、昆虫全般を受け入れられる自信は1ミリもない。ただボクにとって、すーさんだけが特別なのだ!



「まとめ。」

こういった感情を芽生えさせてもらえたのも、コロナの影響であり、トイちゃんのおかげ。

人がハマっているコトって、どんなコトでもそれぞれ魅力があって、それを知ろうとするかそうでないかだけだと思っている。好き嫌いのフィルターですべてを見てしまうと、表面的な部分で仕分けされてしまって、一歩奥にあるハマる要素を見逃すことがある。

欲張りで好奇心旺盛なボクは、いろんなコトを知りたいし、体験したいと願う。限度はあるが。。。

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